死役所2巻に収録されている6条「腐ったアヒル」に登場する「アヒルロード」という漫画の話です。
自分の夢をかなえることができなくなるとわかったら人生を投げますか?
今回の「腐ったアヒル」の話はそんなお話です。
「腐ったアヒル」の意味するものとは?
また、アヒルロードの作者の死の真相を見破った人物についてもご紹介いたします。
「アヒルロード」ってなに?
「アヒルロード」とは、漫画の作品の名前です。
「アヒルロード」は戸川アランが原作者、そして塙(はなわ)保(たもつ)が作画を担当している漫画です。
死役所にもその漫画本があったようで、自殺課にやってきたハヤシはニシ川のデスクに漫画本があることに気がつきます。
それは、その本を持ったまま死んでいった男の子の漫画で預かったものだったのです。
ハヤシは漫画を一読すると変な話だと妙な顔をしつつ、漫画本を譲ってくれというのです。
実はハヤシの趣味は有名人のサイン集めと漫画のコレクションするのは好きということで、その漫画「アヒルロード」はハヤシのコレクションに加えられることになるのでした。
そして、ハヤシは漫画家が自殺課に来たら教えて欲しいとお願いをします。漫画家は自殺する人が多いからと話していました。
この「アヒルロード」という漫画は結構売れていたようですが、実は塙は戸川に会ったことがありませんでした。
戸川のような改新のアイディアをうらやましく思い、作画に行き詰った時には、バイクに跨るようにもなるのですが、そこで彼は事故に遭ってしまうのでした。
「アヒルロード」の塙が死亡した真相とは?
事故に遭って一命を取り留めた塙ですが、事故の影響で視力を失ってしまうのです。
視力を失い、漫画家として生きてくことができなくなったことを知った塙は失望します。
漫画家として生きていく!
その夢さえ見ることが許されなくなった現実を突き付けられたのです。
しかし、塙は漫画は描けなくなったが、物語を作ることはできる!
そうです!
原作者としての道を選び、そのために必要なパソコンの技術を身につけるために懸命にリハビリに励みます。
しかし、そのあとに塙は転落死してしまうのでした。
人気作品の漫画家の転落死。しかも視力を失い漫画が書けない状態だったことから、世間では塙が漫画家書けなくなったことを悲観して自殺をしたのだと決めつけて話題となっていました。
しかし、死役所に来た塙。
案内されたのは「生活事故死課」でした。
塙は事故死だったのです。
市役所では死因は正確に取り扱われますので、世間のウワサとは違い塙は自殺ではなく、事故死だったのです。
事故死であったことを知った塙は、その事実を受け止め、生活事故死課で手続きを終え、とどこおりなく成仏していくのでした。
自殺課で漫画家が来るのを待っていたハヤシは、塙が生活事故死課に来て成仏してしまったことを知り、サインがもらえなかったと悔やんでいましたが・・・
「腐ったアヒル」の意味とは?
今回の作品のタイトルは「腐ったアヒル」
でも、作品の中に出てくる漫画のタイトルは「アヒルロード」です。
なぜ「腐ったアヒル」なのでしょうか?
少し、私なりに考察をしてみました。
自分の思い通りにならないことがあると、途中であきらめてしまう人、それでもあきらめずに挑戦続ける人、新たな進む道を見つける人など、その対応は様々です。
今回、登場していた塙は「漫画家になる」という夢を描いている青年でした。
しかし、視力を失うという漫画家としては致命的な障害を負ってしまいます。
視力障害という大きな壁にぶつかってしまった塙でしたが、自分の人生を投げることなく、つまり、「腐ることなく」懸命にリハビリに励み、新たな原作者としての夢に向かって歩みだしていったのでした。
今回のタイトルの「腐った」は世間からは視力を失ったことを悲観して自殺した、いわば「腐ったアヒルロードの作者」として見られていたことから来ているのではないかと考えてみましたが、どうでしょうかね?
ところで、世間の予想とは違って、塙の死の真相は事故死だったのですが、現世で一人だけ塙が自殺でないことを見破っていた人物がいました。
塙の死の真相を見破ったのは誰?
塙の死の真相が自殺でないことを見破っていたのは「アヒルロード」の原作者である戸川アランでした。
同じ作品にかかわりながら、今まであったことのない二人でしたが、作品を通じてお互いの気持ちは通じ合っていたようです。
戸川のところに来た編集者が塙が自殺してしまったことを話していると、塙が失明したことを悲観して自殺をする人間ではないことを戸川は編集者に話しています。
原作者だからこそ、作画作家がどのような思いで作品にかかわり、絵を描いているのかという気持ちがわかったのかもしれません。
その証拠に戸川は
「塙の作品を読んでみたかった」
と編集者に話しています。
編集者はピンと来ていなかったようですが、戸川には塙が原作者としての道を進み始めていたことがわかっていたようでした。
直接会ったことがない漫画家と原作者というのは会っていないからこそ心で通じ合っているのだと、今回もやっぱり涙なしでは見ることができませんでした。
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