「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中であり最新刊の13巻まで発売中のドクターストーン(Dr.STONE)
科学をテーマとしている作品ですが、科学的に考えて矛盾点があるのかについて考察をしてみたいと思います。
本作は「人類が全て石化した」「高校生が文明を復興させる」と荒唐無稽な設定です。
なかでもソユーズの乗組員が人類の祖先としてなりえた理由や文明の遺物はなかったのか?そして、石化から復活した条件など「あれ?」って思うこともあるので、それぞれ考察をしてみたいと思います。
作中では舞台設定や地理についてさらりと解説をしていますが、よくよく考えると不思議に思う点もあります。
矛盾点① 近親婚の弊害はなかったの? ~最小存続可能個体数~
石神村は生き残りの宇宙飛行士6人・3カップルが始祖でしたが、少人数でのコロニー生成は遺伝的多様性が低下する「創始者効果」が起こると言われています。
多様性が低下すると、一つの病気で部族が全滅することもあり得ます。
人類学者のジョン・ムーアは、到着まで200年かかる「火星への飛行ミッション」での必要人口を割り出そうとしました。
産業革命以前のコミュニティの生殖活動を元にしたコンピュータプログラムによって、時間経過とともに人口動態に何が起こるかをシミュレーションし、いくつかのシナリオを導きました。
その結果、カップルの選定と生殖活動を本当に注意深く行えば、初期のコロニーにおいて75組から90組の若いカップルが必要と結論づけました。全員合わせても200人以下で済みます。
ですが、他の人類学者は、これほど少ない数でうまくいくのは、旅の最中に子孫が子どもを作り続けた場合だけだと言っています。
つまりうまくいっても創始者は200人程度が必要ということですね。
一方、北センチネル島というインドの島に着目してみます。
北センチネル島はインド領アンダマン諸島中の島。
島には先住民であり、センチネル語を話すセンチネル族が50人から400人程度居住していると見積もられている。
彼らは狩猟や沿岸での釣りで食料を確保しつつ石器時代的な生活を営んでおり、外部との接触を厳しく拒否している(未接触部族)。
21世紀に入っても、漂着をしたり、上陸を試みたりした外部の人間がセンチネル族に殺害される事件が発生している。(Wikipediaより)
と、まるで石神村のような生活が営まれています。
文明との接触を断っているので正確な生態は不明ですが、一説によると数万年から数千年ほど前からこの島で暮らしているようです。
各国の調査団も 病気を持ち込んでしまったら全滅の可能性がある、と及び腰だそうです。
やはり近親者で形成されたコロニーはリスクが大きいんですね。
なので「創始者が6人しかいないのはあり得ない、が 万に一つの可能性で生き残ることがある」といったところでしょうか。
マンガだし奇跡が起こったのだろうといえばそれまでですが、矛盾点の一つではあるのではないでしょうか?
矛盾点②文明を活かすことはできなかったの?
石神村があるのは、地形から見て伊豆半島近辺です。
宝島は石神村から機帆船で数時間という位置から、伊豆諸島であると思われます。
現在 下田港から出ているフェリーは2時間30分程度で神津島に着くそうです。
伊豆諸島には三宅島・八丈島などの有人島も存在しており、もちろんモーターボートや病院も存在します。
白夜たちが漂着したのは無人島だとしても、手漕ぎボートで近くの有人島へ行く⇒モータボートを手に入れる(鍵がなければ直結する)⇒本土を目指す ことはできなかったのでしょうか?
人工建築物は3700年はもたなかったようですが、10年100年程度は余裕でしょう。
ジブリの「風の谷のナウシカ」ではペジテという工業都市が昔のエンジンを使ってガンシップを作っていたりと、文明崩壊ものは過去の発明品を有効活用しています。
文明の遺物を有効活用すればもっと発展があったのでは?とつい考えてしまいます。
人口が増えるまでは生活基盤を整えることと素材集めに集中して、冒険者を出せる頃には何も使えない状態になっていた、のならあり得るでしょうか?
一組の夫婦が3人の子供を産めば、順調にいけば7世代目で人口100人に到達します。
初代から200年後くらいでしょうか?
その頃ようやく冒険する人工を出すことができたけど、その頃には残留物も崩壊していた、色々な選択を重ねて、ベストではないけれど現状に至っている、というところでしょうか。
矛盾点③ 他に自力復活した人はいなかったの?
現状 自力で復活したのは千空と大樹のみで、他の現代人は千空や司が復活液で石化を解除しました。
千空の見立てでは、3700年間考え続けた⇒石のエネルギーを消費した⇒復活できた のだろうということで、自力復活の条件は「3700年間意識をとばさない」と考えています。
3700年間寝ずに意識を強く保つと考えるだけでくらくらしてきますが、千空の周りには自身含めて2人存在します。
他に復活した人はいないのでしょうか?条件を考えてみます。
〇 数千年間 意識をとばさない精神力がある
〇 生き返ったのが春~秋だった
〇 一人で生き延びる頭脳と体力、知識がある
〇 石神村の炊く火が見えないところにいる?(近くにいたら寄ってくるはず?)
といったところでしょうか?
現代人でそれが可能な職業を考えてみます。
職業 | サバイバル能力 | 食料確保 | 医療知識 |
登山家 | ◎ | △ | △ |
漁師 | △ | ◎ | △ |
農家 | △ | 〇 | △ |
猟師 | 〇 | 〇 | △ |
医師 | △ | × | ◎ |
自衛隊員 | ◎ | 〇 | 〇 |
といったところでしょうか?
医療知識がないと詰みそうですが、医療従事者では食料確保が難しそうです。
しかも他の人に復活の兆しが見えないと発狂しそうな感があります。
戦前の小説家・夢野久作先生の「瓶詰の地獄」という小説では南国の島に漂流した兄妹の姿が描かれましたが、苦悩の末に自殺を選びました。
もしかしたら千空より先に一人で目覚めて一人で散っていった先駆者がいたのかもしれませんね。
そうでなければ四国や九州あたりで司帝国的なものが発生しているかもしれません。
今後 描かれるかもしれませんが「他に復活者はいないの?」というのは矛盾とまではいかないけれども、一考の必要があると思います。
ドクターストーンの矛盾のまとめと感想
〇 近親婚の弊害はなかったし、順調に人口が増えた >奇跡が起こった!
〇 文明の遺物を利用しない >人口を増やす時期を過ぎたら、もう使えなくなっていた
〇 自力復活者は他にいない >いない若しくは描かれていない、一人で生きて死んだ
と 3点を矛盾点と理由として挙げました。
今後描かれるとしたら、3つ目の「他の復活者」についてですね。
何ならアナザーストーリーとして単行本1冊分くらい描けそうです。
5~10人くらいのオムニバスで、年齢性別様々な人物が生きていく様なんかぜひ読んでみたい!できれば青年誌で!と思ってしまいます。
とはいえ、概ねの疑問点について作中で明かされているのには感心します。
ストーリーを先の先まで計算して練っているんだろうなと胸が熱くなりますね!
アニメ第2期の作成も発表されましたし、今後の展開も楽しみです。
以上、ドクターストーンの矛盾点についての考察でした!
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